もう唄わないで
暗闇から。
私の目の前に。
勇気くんが現れた。
「勇気くんっ!!」
あの夜と同じ、小学四年生の勇気くん。
体は汚れていて。
疲れた様子の勇気くん。
私を見て、勇気くんはただひと言。
「響ちゃん、ありがとう」
と、呟いた。
その声が。
高い声で。
そのことが、私の胸をしめつけた。
「勇気くん、もう大丈夫だからね?一緒に帰ろうね?」
私は勇気くんを抱きしめた。
細い、小さな子どもの体だった。