もう唄わないで
こうして、私達は。
日常を取り戻した。
勇気くんが戻って来たことで。
世間は大騒ぎだったけれど。
私達は秘密を守り通す約束を交わした。
小学生の時の肝試しのことも。
勇気くんを取り戻したことも。
奈保ちゃんを見殺しにしたことも。
全部。
私達の秘密。
私は。
祖母の家から、実家に帰ることにした。
星無市で。
みんなと一緒にいたいから。
目を閉じると、聞こえてくる。
奈保ちゃんの、あの声。
私が【うるおい鬼】をすることは、きっともう無い。
だけど。
これから先。
ずっとあの声を、私は忘れられない。
『ねぇ、唄ってよ』