初ちゃんと緑さん
身長が低い私は、基本下の棚の補充しか頼まれない。
(羨ましい…)
緑さんは身長が私よりも20cmくらい高いと思う。
顔も美人だし、スタイルも…うん。大人。
それに比べ…
自分が見える視界の低さ。
黒い棚のすみっこに反射してうつる、自分の小学生みたいな丸い顔。
幼児体型なのも嫌。
「初ちゃん、手」
「すみません。」
止まってしまった手を動かす。
終始無言。
緑さんはちょっと"アレ"だけど、仕事に対しては真面目。
見習わなきゃ
全て本を並べ終わり、スタッフルームに戻る。
「台車戻しますね」
「ありがとうー」
私はスタッフルームの隅に台車を戻す。
緑さんはなぜか反対側の隅の方にしゃがみこんでいた。
「また、具合悪いんですか?」
私は緑さんに少し上から声をかけた。
「締め切り、締め切りがぁぁぁ…っ」
これが漫画家の現実みたい。
店長や他のスタッフがいる時はシャキッとしているのに、私の前では少し弱々しい感じになる。
「緑さんは、頑張りすぎですよ…。緑さんは充分、頑張ってますから」
私の声が聞こえたみたいで、少し顔を上げる。