仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
不倫という関係

 *

 その日は風の強い寒い日だった。給湯室で女子社員二人が温かいコーヒーを入れながら、楽しそうにおしゃべりをしているのが聞こえてきた。

「今日は寒いよね。風も強いし、早く帰りたいな」

「ホントそう」

「早く帰りたいって言ったらさ、大和さん今日結婚記念日だから早く帰るって!」

「そうなんだ。わー奥さん愛されてるね」

「「いいなー」」

 最後に羨ましいといった様子で、女子社員二人の声が重なる。

 えっ……。

 その会話に美月は体を強ばらせた。

 結婚記念日……?

 奥さん……?

 女子社員二人の声がだんだんと遠くなっていく。

 いったいどういうことなんでろうか?

 私の聞き違い?

 でも……確かに大和さんって……。

 聞き違いであって欲しい。だって明日は大和さんと会う約束をしている。今日奥さんと幸せな結婚記念日を過ごす人が、次の日に他の女と外で会うわけがない。

 ないはず……。

 美月はそう自分に言い聞かせ、黙々と午後の仕事をこなした。


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