仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
オフィスに肌を打つ乾いた音が響き渡る。
美月は叩かれた頬を押さえる事も出来ずに呆然とその場に立ち尽くした。何も言わずに立ち尽くす私に向かって女性が、大きな声でまくし立てた。
「あんたよくも家の夫を誑《たぶら》かしてくれたわね。わかっているのよ。この泥棒猫が!絶対に許さないからね!これに見覚えがあるわね?」
それは私のピアス?
思わず目を見開くと、確信したように女性が声を荒げた。
「やっぱりあなたの物なのね?これ見よがしに夫の服の中に入れるなんて……絶対に許さない」
それだけ言うと女性はピアスを持ってオフィスから出て行った。
シンと静まり返ったオフィス内で、美月の心臓の音だけが大きな音を立てていた。
あの人は大和さんの奥さん?
呆然と立ち尽くす美月を上司が呼び、すぐに別室へと連れて行かれた。そして上司から蔑《さげ》むような視線をむけられながら、今の出来事はどういうことなのかを問いただされる。しかし、美月はそれに答えることが出来なかった。何も答えない美月に対し、上司は大きな溜め息を付きながら一週間の謹慎を言い渡してきたのだった。