仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
美月はまるで迷い猫のように、フラつきながら明るいネオン街を歩いて行く。時々人と肩がぶつかり、怒号が聞こえるがそれを無視して進む。フラフラと歩く美月の姿が奇妙に見えるのか、すれ違う人々が美月を避けるように歩いて来る。そんな美月の前に一人の男性が近づいてきた。
「お姉さん、どうしたの?くらい顔しているね?良かったらうちの店においでよ。気晴らしにどう?」
美月は俯いたまま男を無視して、そのまま歩いて行く。すると男はそんな美月の後を追いかけてきた。
「ちょっとお姉さん、無視しないでよ。絶対に楽しめるから。一緒に行こうよ……ね!」
あまりのしつこさに美月が少しだけ顔を上げると、チャラそうな装飾品と派手なスーツが目に入った。いかにもなホストといた姿だ。それから更に顔を上げると、その派手なスーツを着こなす端正な顔立ちの男性がそこに立っていた。薄茶色の髪を無造作にセットし、耳には沢山のピアス、しかしそれがチャラいというわけでは無く、ファッションとして成立している。それはこの端正な顔立ちのせいなのだろうか?二重の瞳はキリッとしていて吸い込まれそうな黒い瞳に、呆けた顔の私が映っている。俺は芸能界だと言われても納得してしまいそうな顔だと美月は思った。
そんな男性が美月に向かって微笑んだ。
「……ね。おいで」