仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?

 そう言って男性が美月の腕を掴んで歩き出した。腕を掴まれ、たじろぐ美月を気にする様子も無く男性は引っ張っていく。そんな二人の姿は、回りにどのように映っているのだろうか?ホストに捕まった、バカで見窄らしい客だろうか?そんな事を考えていると男性の足が突然止まる。たどり着いたのは明るい電飾で飾られた『ブラックキス』と書かれたビルの前だった。いかにもホストクラブですと主張するビルの前で美月は唖然とする。そんな美月の背中を押した男性が腰に手を回し、エスコートし慣れた様子でビル内へと入って行く。このままこの男の言うままに流されてしまっても良いのかという思いに駆られ、体を強ばらせる。すると男性がそんな美月を甘く優しい顔でのぞき込んで来た。

 これが女を落とすホストの顔か……。

 世の女性達はこの顔にコロッとやられてしまうのかと、他人事のように思ったが、今まさに自分がそうなろうとしていることに気づく。しかしそれでも良いかと思った。ここまで落ちた人間だ。



 最後に楽しく遊んでその後は……楽になりたい。






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