仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?

 少し顔色が悪いように見えたが大丈夫だろうか?そんな事を思いながら涼と呼ばれていた男性に視線を向ける。すると私の前に先ほどの充がもってきた緑色の瓶を差し出してきた。

「シャンパン飲める?」

 その問いに美月はコクリと頷いた。

 それを確認した涼はシャンパンの回りに覆われているシールや金具を取り除くとコルクを器用に抜いた。コルクが「ポンッ」と小気味の良い音を立てて抜ける。するとシャンパンのフルーティーな香りが漂ってきた。シャンパングラスに琥珀色の液体がトクトクと美味しそうな音を立てて注がれ、シュワシュワと気泡がはじける音と、良い香りに溜め息が漏れた。気を張っていたせいか、一気に体から力が抜けた。こんな時で無ければこのシチュエーションと香りに心が躍ったのだろうが、全くといって心が動かない。凪いだ心が、虚しいと悲鳴を上げそうになる。それをグッと我慢する。







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