仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
訳が分からずパニックを起こす美月に、男性がクスリと笑いながら声を掛けてきた。
「美月どうしたの?俺はおはようって言ったんだよ?」
あっ……あいさつ……。
そうよね。
朝の挨拶は大切よね……って、そうじゃない!
今はそれどころじゃないのよ!
早く、是非にこの状況を説明して欲しいの!
そのためには……そう、挨拶……挨拶よね。
「あの……その……おはよう……ございます」
「んっ……おはよう」
たどたどしく挨拶をすると、男性がもう一度挨拶を返しながら美月の頭にキスを落としてきた。
何……凄く甘い。
まるで付き合いたての恋人同士のような挨拶に、美月は体を強ばらせた。するとそれを見ていた男性がクスクスと笑い出す。
「美月そんなに体を強ばらせないで、大丈夫。昨日は何も無かったよ。寂しそうな君を一人にしておけなくて、ベッドに入れたんだ。だから心配しないで……ね」
優しい声……。
男性から美月を安心させるような優しい声が聞こえた。それから男性は美月を後ろから抱きしめていた状態のまま、もう一度強く抱きしめてくれた。
温かい……。
人の温もりを感じるのは何年ぶりだろうか?見ず知らずの男性だと言うのに美月は、癒やされていた。こんな状況下だというのに美月は、人生で初めてと言うほどの安らぎを感じていた。そんな安らぎが突然に終わる。男性の腕がスルリと美月の体から離れたのだ。
あっ……離れてしまう。
美月は知らない男性の腕が離れてしまうのを寂しく思い、思わずその腕を掴んだ。それに驚いたのか、男性の動きが一瞬止まったが、クスクスと優しく笑う声が聞こえてくる。