仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
女子社員達からの刺さるような視線に、冷たい汗が背中に流れるのを感じた。そんな視線を無視して、涼は更に甘い空気を作っていく。愛おしそうに美月を見つめ、綻ぶように笑う。それだけで回りの女子のみならず、男性達も頬を染めた。
「さっ……笹原さん……その、場所を移したいのだけれど」
「ん?そうだね。ここではゆっくり話も出来ないし、時間も無いから行こうか」
時間が無い?
時間が無いとはどういうことなのか疑問に思ったが、一刻も早くこの場から立ち去りたい美月はすぐにそれを聞き流してしまった。それを数分後に後悔することになるのだが、今の美月は気づいていなかった。
美月は涼に促され、皆の視線を感じながら高そうな車に乗り込んだ。車に詳しくない美月だったが、車内の内装だけでこの車が高級車だということが分かる。サラリと手触りの良い座席に、高級感あるれる装飾、極めつけが左ハンドル。呆ける美月にシートベルトをするように促す涼。それを確認して涼がシフトレバーを操り、車が動き出す。するとグンッと体が座席に引き寄せられた。
こんな車に乗ったことが無い。
チラリと車を運転する涼を盗み見て、ほうっと息を漏らしてしまう。真剣に車を運転する横顔に、胸がドキンッと跳ねた。ジッと見つめ過ぎていたのか、それに気づいた涼が恥ずかしそうに頬を掻く。
「そんなに見つめられると照れる」
「ごっ……ごめんなさい」
そしてまた甘い空気が流れる。