仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
「おい。誰だあれ?」
「うっわ。可愛い」
そんな声が聞こえてきて、美月はそちらに視線を向ける。
……そこにいたのは満面の笑みを浮かべた妹の智咲だった。
「ち……さ……」
「あっ!お姉ちゃん!」
嬉しそうに私の方へ駆け寄って来た智咲が腕に絡みついてくる。
「お姉ちゃん、探しちゃった」
智咲は自分の見せ方を知っている。
可愛い仕草、話し方、目の動かし方、全ては計算されている。
智咲が上目遣いでこちらを見てくる。それを見た回りの人達……特に男どもがポッと頬を染める。
気持ち悪い……気持ち悪い……。
美月は唇を噛みしめながら顔を伏せた。智咲の顔も、回りにいる人々の顔も見ることが出来ずに俯いていると、不意に声を掛けられた。
「この子、岡本さんの妹さん?」
「はい!妹の智咲って言います。姉がお世話になってます」
私が答えるよりも先に、智咲が笑顔を振りまきながら答えると「うおっ」と男性陣から声が漏れる。智咲の可愛らしさに心臓を射貫かれたのだろう。
わかりやすい。
そこからは智咲の独壇場だった。群がる男達に笑顔で答え、ぶりっこなダメな子を演じながら笑う。それを美月は呆然と眺めていることしか出来なかった。
次の日、美月の元に代わる代わる男達がやって来る。智咲ちゃんは元気か?どうにか会えないか?連絡先を教えてくれないか?と……。
またか……。
私はそれを無視して立ち上がる。
「何だよあれ?」
「妹はあんなに可愛いのに」
「ひがんでるんだろ。妹はあんなに可愛いのにさ。ブスは心もブスだな」
ブスは心もブス……。
そんな事、赤の他人のお前達に言われなくたって分かっている。
ホントにその通りだと。
しかし、お前達が思っている妹もまた、なかなかの性格をしていると言うのに、バカな男達は何も分かっていない。見えていない。なぜ分からないのだ。綺麗な花にはトゲが……毒があると言うことに……。
美月は男達の声が聞こえる方に視線をやり、汚い汚物でも見るような目をしながら顔を歪めた。
「うっわ!何だよあれ」
「こっわ……」