仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?

 それから更咲に引きずられるようにして、ネオン街を歩いていた。色とりどりのネオンが輝く世界に、目が奪われる。ここにいると冴えない自分がより一層、冴えなく見える様でこれ以上ここにいることを拒みたくなる。しかしそれを更咲が許さなかった。

「ほら、早く。岡本さん、こっちですよ」

 ネオンの海の中を泳ぐ魚のように、更咲がヒラヒラとしたスカートを揺らしながら笑う。

 そんな更咲に引っ張られながら連れてこられたのは、派手な装飾のビルの前だった。

 ここ?

 お店の名前は『レッドキス』。

 涼が前に働いていたブラックキスと名前が類似している。外の外観もよく似ていた。そのせいで美月が入るのを躊躇していると、更咲がグイッと背中を押してきた。

「岡本さん、行きましょう」

 中に入ってすぐに、ウエイトレスのような格好をした男性に声を掛けられた。

 前に涼からホストクラブでウエイトレスの格好をした人は、ボーイと呼ばれ、店内の掃除やお酒の仕入れ、管理、レジでの会計などの仕事をする人だと聞いていた。

 それにしてもこの人?

 向こうも私に気づいたのか、こちらをジッと見つめてから、手のひらをポンッと叩いた。

「あっ……お姉さん、涼さんと一緒に店に来てくれたお姉さんですよね?」

 やっぱり。

 あの酔い潰れた日に、席まで案内してくれたボーイさんだ。

「えっと……確か充さんでしたか?あの……ここは?どうしてこのお店に?」

「ああ、ここはブラックキスの二号店で、レッドキス。姉妹店とでも言うところですかね」

「そうだったんですね」






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