仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
ゆっくりとフェイドアウトしようとしていた美月に気づいたマナトが、美月の隣に腰を下ろした。
「こっちのお姉さんは何も喋らないね?どうしたの?つまらない?」
「……いえ」
「大丈夫だよ。怖くないから、むしろ俺ら優しいよ。お話しするだけだから、肩の力を抜いて」
マナトがそう言って美月の肩を抱こうとした時、ガラリと店の雰囲気が変わった。
ザワつく店内に靴音が響く。
美月は顔を上げ目の前に現れたその人を見た。
涼……。
「マナトくん。ここは良いので向こうに行って下さい」
マナトは美月の肩に触れようとした腕を、涼に掴まれ動揺した。
「えっ……いや……涼さん……」
「聞こえませんでしたか?」
グッと涼が腕を強く掴む。
「行って下さい」
涼から恐ろしく冷たく低い声が聞こえてきた。部屋の温度を数度低くするような声に、マナトは青い顔をしながらスクッと立ち上がり、逃げるようにその場から立ち去った。その場にいたホスト達もマナトと同様、その場からいなくなった。ホスト達のいなくなった席に涼がゆっくりと座る。
「お客様、楽しんでいらっしゃいますか?」
先ほどの雰囲気から一変、ニッコリと微笑を向けてきた涼に、皆の頬が赤く染まる。自分以外に向けられる涼の笑顔に、何故か胸がムカムカとした。
この感情は……。
……嫉妬?