仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
ボーッと涼の瞳の奥を見つめていると、何とも脳天気な声が聞こえてきた。
「あっれー?!このイケメンくん、この間会社の前にいた人だ。岡本さんの知り合いですか?まさか彼氏とか?」
更咲の口角がニヤリと上に上がった。一緒に来ていた同僚の二人も口角を上げる。
嫌な笑みだ。
三人の表情に背筋がゾクリと震えた。
青い顔をした美月と、更咲の言葉にフロアーがザワつき、冷たい視線が美月に突き刺さる。冷ややかな空気の中、涼が爽やかに微笑みながら更咲の前でシーッと人差し指を立てた。
「そうだったらどうなのかな?営業妨害なんだけど、分かる?この意味?」
涼の顔はニッコリと笑っているが、その目は全く笑っていなかった。その冷めた凍えるような瞳に、周りにいる人間は氷漬けにでもなったかのように動けずにいたが、更咲だけは違った。彼女自身、もともと鈍感な所がある。涼の意図するところを察する事も出来ず、涼の笑みに頬を染めている。
どうしたらこの空気の中そんな顔が出来るのか……勇者か……勇者なのか。
回りは明らかにドン引きをしていた。
ああ……バカな子だ。と回りで見ていた人々の顔からスンッと表情が抜け落ちた。
同僚二人は更咲に訴えるように腕を引っ張っていたが、更咲に二人の意図は届かないようだった。