仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
「美月より美人?俺に釣り合う?あんたが美月の代わりになれるとでも思ってるの?あんたさ……何を勘違いしているの?美月の代わりなんていないんだよ。自分が美人て……美月の方が綺麗に決まってるだろう」
涼がそう言いながら、私の眼鏡を取り、いつもしているマスクを外し、きつく結んでいた髪をほどいた。すると何故か回りから息を呑む音が聞こえてきた。
輝くシャンデリアの光に照らされた黒く長い髪に、白く透き通るような肌、鼻筋の通ったスッキリとした美しい美月の顔を見た人々が驚きの表情を見せる。
「マジかよ……」
「マスクの下にあんな顔隠してたのか」
普段女性を見慣れているホスト達からも、驚きの言葉が飛び出してくるが、美月にはなぜ皆が驚いているのか分からない。
そんな人々の視線から美月を隠すように、守る様に涼が前に出た。
「それで?あんたの方が美人で、俺と釣り合うって?あんたの何が俺と釣り合って?これ以上騒ぎを起こすようなら、本当に営業妨害で訴えるよ。分かったらさっさと帰りなよ。それから今後、美月に嫌がらせや手を出したりする様ならどうなるか……分かるよね?」
美月には分からない角度でもう一度、絶対零度微笑みを浮かべると、更咲の口から「ヒッ」と言う悲鳴の様な声が聞こえてきた。
そんな様子の更咲にとどめを刺すように、涼が威圧を込める。
「分かった?」
「はっ……はい。分かりました」
更咲はカタカタと震えながら、そう答えることしか出来ない様子だった。
そんな更咲から視線を逸らした涼が、充に視線を投げた。
「充、後は頼んだよ」
「分かりました」
ウエイター服の充は、胸の前に手を当て深く頭を下げた。