仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
 
 *

 あれから穏やかな日々が続いていた。何気ない普通の毎日だというのに楽しくて仕方が無い。

 今日もキッチンに立ち夕食の準備をしていると、後ろから温かな何かに包み込まれる。

 ……涼?

 振り向こうとすると、涼が甘えたモードで美月の肩に顎を置き、髪に顔を埋もれさせていた。涼は女性を後ろから抱きしめるのが好きらしい。

「涼、危ないから少し離れて。もう少しで夕飯出来上がるから」

「わーい。嬉しい。今日は何?」

「今日は涼の好きな唐揚げだよ」

「やったー!唐揚げ」

 そう言って喜ぶ涼が可愛すぎる。

 ああ……尊い。

 これが最近よく聞く尊いという現象なのか。

 くらりと目眩を起こしそうになるのを我慢していると、涼がとんでもない言葉を口にした。

「好き」

 ひょえぇぇーー!

 すっごい!

 言葉の攻撃!

 強すぎるでしょ。

 美月は両手で顔を覆い、必死に耐えていると「唐揚げ大好き」と聞こえてきた。

 やばい……無意識のうちに、勝手に唐揚げの部分を切り捨てていたみたい。

 顔に登ってきた熱を冷ましながら、冷静を保つため深呼吸を繰り返した。





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