仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
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美月は会社の前で待ち伏せをしていた智咲に声を掛けられ、思考が停止していた。
回りがザワザワと何かを言っている。
智咲が満面の笑みを浮かべると、更にザワつきが大きくなる。
それでも体は動かない。
血の気は引き、体がガタガタと震え出す。
立っているのがやっとの状態だった。
「……ちゃん……お姉ちゃん!」
腕にしがみついてきた智咲が私を呼ぶ。何も答えない私に対し、頬をぷくっと膨らませ、可愛く見せる仕草を見せる。回りの人達の目には、さぞかし愛くるしく見えている事だろう。
そう思った所で冷静さを取り戻す。
スッと肺に酸素を取り込み一気に吐き出すと、脳に酸素が運ばれ思考が回り始める。私は智咲の腕を掴むと、人気を避けるように歩き出した。