仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?

 しばらくその場で呆然と立ち尽くしていたが、ここにいても仕方が無いことに気づき帰ろうときびすを返したとき、人にぶつかってしまった。

「ごめんなさい」

 智咲はいつもの可愛い自分を演じながらそっと顔を上げた。すると目の前に、とても顔の整ったスーツ姿の男性が、こちらをジッと見つめていた。

 ふふふ……。

 私に惚れちゃったかな?

 このお兄さんイケメンだから、私の物にしたいなー。

 そうと決まれば……。

 智咲は上目遣いで男性を見つめた。

「ごめんなさい。怪我は無かったですか?」

 大抵の男はこれで落ちるのだ。これで落ちない男性はいない。

 智咲は心の中で、ガッツポーズをした。

「こちらこそすまない。怪我など無いかな?」

 男性が微笑みながら、手をさしだしてきた。そのキラキラとした微笑みに、智咲はポッと頬を赤く染めた。

 凄い、何このオーラ。

 今まで見たことが無いほどのイケメン。

 格好いい……。

 男性は私を立たせると、すぐに離れてしまった。

 あれー?こんなにもイケメンなのに、シャイで奥手なのかな?

 人差し指を口に当て、こてんと首を傾げた。

 これも男性が喜ぶ仕草だ。

 ほら、私を口説きなさいよ。

 しかし男性は更咲には全く興味はありませんと言った様子で、こちらを見ていた。それどころかこの場から立ち去ろうとさえしていた。

「怪我が無かったのなら良かった。それでは」

 えっ……?

 ちょっと、そこは「お詫びに食事でもどうかな?」と誘うところでしょう。

 こんなにいい女が目の前にいるのにウソでしょー。

 目の前から去ろうとしている男性に智咲は、慌てて声を掛けた。

「あっ……あの……」

「え?何か?」

 声を掛けたは良いが、男性の冷たい声音に智咲は口をつぐんだ。

「いえ……その……何でも無いです」

「では……」

 そう言って男性は素っ気なく、お姉ちゃんの入って行ったマンションに入っていった。

 あの人もここに住んでるんだ。

 


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