仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
玄関前ではしたないと思いキョロキョロと回りを見たが、誰もいなくてホッと胸を撫で下ろした。そんな私を見て、また涼が笑った。
その笑顔に心が温かくなって、硬く凝り固まった心が解されていく。
幸せだ。
生まれて初めてそう感じた。
玄関の扉が閉まり、手を繋いでキッチンへ向かう途中で美月は足を止める。それに気づいた涼が振り返る。
「美月?」
私を呼ぶ声、優しい表情、仕草、全てが美月の心に刺さる。
「涼、本当にありがとう。大好きよ」
思っていたことが口から飛び出し、美月はハッとしながら両手で口を押さえた。
好き……。
言ってしまった。
言うつもりなんて無かったのに、涼は気まぐれで私をここに住まわせてくれているだけなのに……。涼のお荷物にはなりたくない。それなのに溢れ出した思いを停める術が美月には無かった。この人が好きなんだと、ほんの少しで良いから私を見て欲しい。その瞳に私を映して欲しい。私の一方的なこの思いは叶わない。そう分かっている。それでも今まで枯渇していた感情が溢れ出すのを止められない。
「涼……大好き」
感情と共に涙が溢れ出し、グチャグチャだった。そんな私をエコバッグを放り出した涼が強く抱きしめてくれた。そのままキスの雨が降り注ぐ。頭、額、こめかみ、瞼、頬、沢山のキスの雨に更に幸せを感じてしまう。