仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?

 思考回路は遮断され、口腔内の刺激だけがダイレクトに脳を伝わって感覚を鮮明にさせる。

「んあっ……はっ……んっ……」

 あまりの気持ちよさに美月はもっともっとと、涼の舌を追いかけた。すると涼がゆっくりと唇を離した。それを名頃惜しげに唇を開いたままで涼を見つめる美月。

「美月はキスが好きなんだね。これからはいっぱいしてあげるからね」

 涼が自分の唇をペロリと舐め取り、熱い瞳でこちらを見つめる。それをボーと眺めていると、涼が突然美月を横抱きにして寝室へと歩き出した。二人は同じ部屋で暮らしていても、今までこのような関係にはなったことは無い。ここで一線を越えても良いのかためらわれた。これで肌を重ねれば、今までの関係ではいられなくなるのは明白。

 それでも……。

「ごめん美月。俺……美月が欲しくて仕方が無い。もし嫌ならすぐにこの部屋から出て、自分の部屋に鍵を閉めて」

 ベッドの横にそっと降ろされた美月は、そう言って私の答えを心配そうに待つ涼を見上げた。この人はいつも私の事を思って動いてくれる。それがとても嬉しくて、涼の不安を取り除きたくて笑顔で答えた。

「涼……ありがとう。私もあなたが欲しい」

 そう言葉にしてから、自分がとんでもなく恥ずかしいことを言ったことに気づき、赤くなった顔を見られたくなくて涼の胸に顔を埋めた。それから恥ずかしさをごまかすため、イヤイヤと顔を横に振ってみる。すると涼の悶絶した声が聞こえた来た。

「くっそ!もう無理」

 気づくと美月は涼に押し倒されていた。驚きながら顔を上げると、目の前に涼の熱を帯びた瞳と視線が混じり合う。その顔には男の色香を漂わせていて、お思わず息を呑んだ。

 美しいこの人が、私を求めてくれる。

 それが嬉しくて美月は涼の首にしがみつき、耳元で囁いた。

「大好き」

 それを合図とばかりに、涼の唇が美月の唇を塞いだ。それと同時に涼が美月の体に触れてくる。優しいその手の動きに導かれて美月の吐息が上がる。美月が幸せの絶頂を迎えた時、涼もまた幸せの絶頂を迎えていた。重なり合う二人は何度もその絶頂を迎え、愛を確かめ合った。




< 88 / 117 >

この作品をシェア

pagetop