XYZ
好きになって、付き合うことが出来て、色んな思い出を作って、
嫉妬して、私だけを見て欲しくて、
でも見てくれなくて、後輩でその心を埋めようとして、
その後輩がどんどん離れていくような感じがして、

気づいたら私はどこへ向かえばいいか、分からなくなってた。


「今は、この今しかないんだ。」

私の頭を優しく撫でると、レイさんは奥の方にあるピアノの方へと向かう。

「もう、君がここに来ることはないよね。」


「はい」

レイさんは私に向かって優しく微笑むと、聞き覚えのあるゆったりとしたメロディーの曲をピアノで弾き始めた。


(お母様の曲…)


小さな時、よく歌ってくれた。

ピアノの音に合わせて、口ずさむように私は歌った。


私が本当に、本当に好きなのは、


"あの子に追いつきたい私"じゃなくて


"あの子が好きで、あの子のそばで、私らしくいられる私"なんだ。
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