XYZ
10
目を開ける。
窓辺には満開の桜。
地面には小さな花々が咲いていて、春が来たこと、あの子との出会いの日を思い出した。


「ナナミっ!!」


お母さんが私を抱きしめた。
その力が強くて、私は『痛いよっ』と言った。


私は約4ヶ月、眠っていた。



沢山検査やら、お薬やら、色々されすぎたけど、
4ヶ月ぶりに歩いたり、何かをしたり、生活に全く支障を来さなかった。
元々の運動神経の良さが今生きてくるとは思わなかった。

直ぐに退院して、4月の下旬には学校に通えることになった。
仮進級みたいな扱いになっていて、土日も学校に行って単位を取って、なかなか病み上がりにしてはハードな生活を送った。


クラス替えもあったみたいで、あの子の姿は見えなかった。





「え、須藤さん?あぁ、」

須藤 仁香は転校していた。
それどころか、海外にいるらしい。

バイトも辞めていた。
ケンさんに理由を聞いても、引越したとしか言われない。

あんなに家に息苦しさを覚えていたのに?
それが嫌で、この学校に入ったんじゃないの?



おかしい。
ニカはそんな子じゃない。



私の方がおかしいことを思っていると自覚していた。
でも、ニカを信じたかった。
< 125 / 134 >

この作品をシェア

pagetop