XYZ
『や、やめて…』

殴る音、蹴る音、ものを投げる音、

『おやめ下さい!ニカさんが起きてしまいます!』
『だまれ!!!』

ドンッ、と大きな音。

『お前など、この家にいる資格は無い。』
『娘を、愛せない、父親など要りません。』


私のせい……



『ニカ、お前の婚約者だ。』
『初めまして、スビンです。』


『やっと跡継ぎが出来た。君が誇らしいよ。』
『いえ、お父様にそう言っていただけて光栄です。』
『お父様なんて、気が早い』
『いずれ、なるのですから』

誰…誰……

私から、


私から自由を奪わないで!!!






「はっ、ん、はぁ…、っ」

部屋は暗い。
まだ真夜中。
時計の針は3時を指し示している。

あまりの息苦しさに目を覚ました。

嫌な夢だった。


枕元に置いていたスマホが光っている。


息を切らしながら、通知を確認する。

(やっぱり、そうか…)
来ていたLIN○の内容は至って普通の会話。

『明日シフト被ってたよー!』
『やっぱりニカが一緒じゃないと嫌だなぁ…』

付き合っている人からのLIN○。

なんだか嬉しくて、真夜中なのに返事を返してしまった。
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