XYZ


えっ…


痛く、ない……



私の腕の筋力は恐ろしい程無かったようで、半分もまともに降りれず、落下した。

はずなのに




「我ながらナイスキャッチすぎない?」
「ナナミ!」
「しっ!声でかいとバレちゃうでしょ!」

私はお姫様抱っこの体制でナナミに抱えられていた。

命拾いした…

「ありがとう、協力してくれて」

私はそう言いながら自動で閉じる窓にリモコンを向けて、窓を跡形もなく閉じた。
落ちた時の衝撃で長く繋げていた布たちは運良く下に落ちてくれた。

「降りても大丈夫?」
「あ、ごめん」


私は地に足をつけた。


『行こっか!』

『うん!』

ナナミの口が動く。

まだ涼しい、夏の朝。
私たちは手を繋ぎながら、駅へと向かった。

悪いことをしてしまったという罪悪感よりも、今この手を繋いでいる人との楽しい一日が始まることに自然と私の心が高鳴る。

家を抜け出して出かけるなんて、まるで小さな頃に読んだ絵本の主人公みたいだった。


ずっと望んでた、この感じ。


「何、ニヤニヤしてるの」

ナナミが私の手を引き、少し前を走る。
振り返って私をいじるみたいに話しかける。
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