モラハラ夫との離婚計画 10年
 ふりん

不倫(ふりん)

 人が踏み行うべき道からはずれること。特に、配偶者でない者との男女関係。



 罪悪感は微塵もない、それは夫がクソみたいな人間だからに他ならない。自業自得。ザマァ。

 それにしても私にあんな素敵な不倫相手ができるなんて。神様はちゃんと見てるのかも。お前は気の毒になぁ。せめて不倫相手は最高のを用意するよ、なんて。

 パソコンの間から少しだけ目線を上げて、右を見る。あくまでも自然に、周りを見渡すように。

 真剣な顔してパソコンの前で作業する恒くん、うーん。カッコいい。気配を察したのか顔を上げた、目が合う。目元に皺を寄せて微笑んだ。クラクラする。



『ちゃんと仕事しろよー! 笑』

 恒くんから社内メールが入る、大丈夫なのかな? 心配よりも喜びが上回る。

『恒くん見てた、カッコよ 笑』

『優香も可愛いよ。愛してる』

 キーボードの上に突っ伏した。ニヤけた顔が元に戻らない。

「井上さん? 大丈夫? 具合悪いの」

 頭上からお局の声が降ってきて、ハッとする。すぐに顔を上げて「大丈夫です」と答えた。

 訝しげな表情で振り返りながら席に戻るお局に愛想笑いを返して再びメーラーを開く。

『明日は?』

『大丈夫』

 毎週火曜日、それが恒くんが決めた二人きりで会える日。毎日一緒にいたいけどそれは無理。馬鹿の飯を作らねば。

 お金なんてどうでもいい。夫と別れたら一緒になってくれるかな……。

 いやいやいやいや、重いよ。ちょっとエッチしたくらいで勘違いしちゃいけない。私は分をわきまえられる女。高望みはしない。

『優香の作ったご飯食べたい』

『いいよ、なに食べたい?』

『ハンバーグ!』

 ぷっ、子供か。可愛い。旗でも立ててあげようかな。

 早く明日になーあれ♪

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