モラハラ夫との離婚計画 10年
「やだー、久しぶりー!」
個人経営の小さな居酒屋を貸し切って開催されたクラス会は土曜日の昼下がりから始まった。幸い、夫は社員旅行と称して不倫旅行に出かけている。
誰からも、覚えて貰えてなかったらどうしよう。そんな心配はすぐに解消した。
「優香じゃーん? なに、なんか垢抜けたねー」
「お、水森か?」
会場に着くと矢継ぎ早に話しかけられた。旧姓で呼ばれるのが少しだけくすぐったい。
次々に集まってくる懐かしい顔、不思議なもので十二年ぶりでも。化粧が濃くても、禿げてても。何となく誰だか分かって安心した。
「はい、はーい! それじゃあみなさん一旦席に着いてくださーい」
声を聞いても誰だか全く分からない、けど仕切ってる事でそれが彼だと察した。意味もなくドキドキする。
「とりあえず乾杯しますので、とりあえずビールを、テーブルの。そう、瓶ビールで」
え? だれ?
いや、正確には成長した松本くんだと一目で分かった。みんなも分かってる。ただ。
めちゃくちゃイケメンになってた。
顔の作りは変わってない、もともと可愛らしい顔はしていた。それが時間を掛けて男らしさが加わって、坊主だった頭も韓流アイドルみたいにオシャレになっていた。
何より背が伸びた。
「松本くんめっちゃイケメンになっててウケる」
隣の女子が小声で呟く。
なんだろう、この気持ち。
どこか遠くに行ってしまったような疎外感。
思い出を上書きされたような喪失感。
私は決してカッコいいから好きになったんじゃない。それを何となく誇りに思ってた。けど、今それを言ってもきっと説得力がない。それくらい彼は変わってしまった。
「では、久しぶりの再会にかんぱーい!」
中学校を卒業してからも交流があった子、まるでなかった子。みんな懐かしく当時の思い出を振り返る。
ちゃんとあったんだ、思い出。
ちゃんといたんだ、友達。
くだらない事で大笑いしながら、そう言えばこのクラスはみんな仲が良かった事を思い出す。
次々に増えていく連絡先。「また集まろうよ」なんて言って本当に集まるかは置いといて。久しぶりに楽しい時間を過ごした。
「水森? だよな」
強引に隣に座ってきた松本くんはまじまじと私の顔を観察して言った。
「また、可愛くなったなあ」
また? の意味は分からずに「ありがとう」と返事する。距離が近い。
「結城は水森が好きだったからなぁ」
いつの間にグデグデに酔っている額が怪しい男子、確か伊藤くんが笑いながら言った。
「え?」
「ちょ! やめ」
松本くんが止めようとするが伊藤くんは構わず続けた。
「バレンタインチョコもらって、大はしゃぎしてたよこいつ」
隣の松本くんを覗き見ると真っ赤な顔で俯いていた。あっ、松本くんだ。
遠くに行った思い出は踵を返して戻ってきた。やっぱり同級生っていいな。
夫も恒くんも一回り歳上。同い年でしか味わえない空気感。そんなぬるま湯に浸ったような感覚に自然とお酒も進んでいった。
個人経営の小さな居酒屋を貸し切って開催されたクラス会は土曜日の昼下がりから始まった。幸い、夫は社員旅行と称して不倫旅行に出かけている。
誰からも、覚えて貰えてなかったらどうしよう。そんな心配はすぐに解消した。
「優香じゃーん? なに、なんか垢抜けたねー」
「お、水森か?」
会場に着くと矢継ぎ早に話しかけられた。旧姓で呼ばれるのが少しだけくすぐったい。
次々に集まってくる懐かしい顔、不思議なもので十二年ぶりでも。化粧が濃くても、禿げてても。何となく誰だか分かって安心した。
「はい、はーい! それじゃあみなさん一旦席に着いてくださーい」
声を聞いても誰だか全く分からない、けど仕切ってる事でそれが彼だと察した。意味もなくドキドキする。
「とりあえず乾杯しますので、とりあえずビールを、テーブルの。そう、瓶ビールで」
え? だれ?
いや、正確には成長した松本くんだと一目で分かった。みんなも分かってる。ただ。
めちゃくちゃイケメンになってた。
顔の作りは変わってない、もともと可愛らしい顔はしていた。それが時間を掛けて男らしさが加わって、坊主だった頭も韓流アイドルみたいにオシャレになっていた。
何より背が伸びた。
「松本くんめっちゃイケメンになっててウケる」
隣の女子が小声で呟く。
なんだろう、この気持ち。
どこか遠くに行ってしまったような疎外感。
思い出を上書きされたような喪失感。
私は決してカッコいいから好きになったんじゃない。それを何となく誇りに思ってた。けど、今それを言ってもきっと説得力がない。それくらい彼は変わってしまった。
「では、久しぶりの再会にかんぱーい!」
中学校を卒業してからも交流があった子、まるでなかった子。みんな懐かしく当時の思い出を振り返る。
ちゃんとあったんだ、思い出。
ちゃんといたんだ、友達。
くだらない事で大笑いしながら、そう言えばこのクラスはみんな仲が良かった事を思い出す。
次々に増えていく連絡先。「また集まろうよ」なんて言って本当に集まるかは置いといて。久しぶりに楽しい時間を過ごした。
「水森? だよな」
強引に隣に座ってきた松本くんはまじまじと私の顔を観察して言った。
「また、可愛くなったなあ」
また? の意味は分からずに「ありがとう」と返事する。距離が近い。
「結城は水森が好きだったからなぁ」
いつの間にグデグデに酔っている額が怪しい男子、確か伊藤くんが笑いながら言った。
「え?」
「ちょ! やめ」
松本くんが止めようとするが伊藤くんは構わず続けた。
「バレンタインチョコもらって、大はしゃぎしてたよこいつ」
隣の松本くんを覗き見ると真っ赤な顔で俯いていた。あっ、松本くんだ。
遠くに行った思い出は踵を返して戻ってきた。やっぱり同級生っていいな。
夫も恒くんも一回り歳上。同い年でしか味わえない空気感。そんなぬるま湯に浸ったような感覚に自然とお酒も進んでいった。