卒業証書は渡せない
26.はんぶん。
修学旅行の朝は、空港に集合。いつものように私の家に奈緒が迎えに来て、途中で弘樹と合流した。
空港の近くには、思い出の詰まった遊園地がある。
「夕菜……辛いだろうけど、楽しもうね?」
電車の窓から遊園地を見ていたら、奈緒が心配してくれた。
本当に、辛い。
今の私の置かれた状況、全部が辛い。
でも、沈んでばかりいられないから。
「うん。ありがとう。……抹茶のパフェ食べようね! それから清水寺も行きたいな」
飛行機の中も、空港からのバスも、奈緒や弘樹とは別行動だった。だけど、それが良かったのかな。
いつもと違うところで楽しむ2人を、邪魔したいわけじゃないけど、嫌がらせしてしまいそうだったから。
私の隣には琴未がいて、3人のことを少し忘れて楽しく出来るようにいろんな話をしてくれた。
「昼間は嫌なこと全部忘れて、楽しもうよ。話はあとで……夜にたっぷり聞いてあげるから」
みんなが支えてくれるから、こんなに凹んでる自分が嫌にもなったけど。でも、奈緒と弘樹に嫉妬してるのも事実で、牧原君のことも忘れるわけがない。
やっぱり、片隅だとしても、大きく残るんだよ──。
自由時間の行動は、琴未と別れて予定通り3人になった。
これが一番落ち着く仲間ではあるけど。
同時に一番、嫌な私の立場。
でもそんなことは、奈緒には絶対に悟られたくないから、無理に元気にやってみた。
空回っても良いんだ。
奈緒が楽しいなら、良いんだ。
京都での自由時間はお昼から夕方だったので、まずご飯を食べにお店……を探したけれど。もちろん、ファストフードのお店はある……けど、京都に来てまでそんなのを食べるのも嫌だから。
最近出来たらしいお蕎麦のお店に入って、丼物とのセットを注文した。
「おおー美味そー! いただきまーす!」
もちろん弘樹の声は店中に響いてしまっていたけど、彼はそんなこと気にしない。本当においしそうにご飯を食べて、見ていたお店の人が笑っていた。
「夕菜もしっかり食べろよ。京都は坂が多くて大変だからな。まぁ、疲れたらデザートもアリかな」
「うん。本当に美味しいね! それにこのお店、庭もあってすごい和むよー」
それから少し計画を立ててから、清水寺へ向かった。本当に坂というか階段が多くて何度もふらつきかけた。写真ではあまり人がいないところを写しているけど、実際は人だらけ。ハイヒールを履いていたお姉さんが、段差で転んでいた。
「やっと着いたー! でも、一番上かぁ……また階段……」
「地主神社って、お寺の中にあるんだね」
まだ牧原君のことを忘れる決心なんてついていないけど。
せっかくここまで来たんだから、縁結びの神様にお願いせずには帰れなくて。
またいつか、牧原君と会えますように。
奈緒と弘樹がいつまでも続きますように。
私も、2人の邪魔をしないで見守れますように。
素敵な男の子と出会えますように……。
神社と言えば、おみくじで。
隣に置かれていた木箱に百円を入れて、おみくじを一つ取り出すと……半吉って。奈緒も半吉って。隣にいた知らない女の子たちも、みんな半吉って。
「奈緒の半分と、俺は中吉にしといて、足して大吉」
「──さてと、お腹すいたし、デザート食べに行こうかな!」
「ははは、夕菜、さっきご飯食べたばっかだよ」
「えーそう? 階段だらけで疲れちゃった」
それは、半分嘘だけどね。
空港の近くには、思い出の詰まった遊園地がある。
「夕菜……辛いだろうけど、楽しもうね?」
電車の窓から遊園地を見ていたら、奈緒が心配してくれた。
本当に、辛い。
今の私の置かれた状況、全部が辛い。
でも、沈んでばかりいられないから。
「うん。ありがとう。……抹茶のパフェ食べようね! それから清水寺も行きたいな」
飛行機の中も、空港からのバスも、奈緒や弘樹とは別行動だった。だけど、それが良かったのかな。
いつもと違うところで楽しむ2人を、邪魔したいわけじゃないけど、嫌がらせしてしまいそうだったから。
私の隣には琴未がいて、3人のことを少し忘れて楽しく出来るようにいろんな話をしてくれた。
「昼間は嫌なこと全部忘れて、楽しもうよ。話はあとで……夜にたっぷり聞いてあげるから」
みんなが支えてくれるから、こんなに凹んでる自分が嫌にもなったけど。でも、奈緒と弘樹に嫉妬してるのも事実で、牧原君のことも忘れるわけがない。
やっぱり、片隅だとしても、大きく残るんだよ──。
自由時間の行動は、琴未と別れて予定通り3人になった。
これが一番落ち着く仲間ではあるけど。
同時に一番、嫌な私の立場。
でもそんなことは、奈緒には絶対に悟られたくないから、無理に元気にやってみた。
空回っても良いんだ。
奈緒が楽しいなら、良いんだ。
京都での自由時間はお昼から夕方だったので、まずご飯を食べにお店……を探したけれど。もちろん、ファストフードのお店はある……けど、京都に来てまでそんなのを食べるのも嫌だから。
最近出来たらしいお蕎麦のお店に入って、丼物とのセットを注文した。
「おおー美味そー! いただきまーす!」
もちろん弘樹の声は店中に響いてしまっていたけど、彼はそんなこと気にしない。本当においしそうにご飯を食べて、見ていたお店の人が笑っていた。
「夕菜もしっかり食べろよ。京都は坂が多くて大変だからな。まぁ、疲れたらデザートもアリかな」
「うん。本当に美味しいね! それにこのお店、庭もあってすごい和むよー」
それから少し計画を立ててから、清水寺へ向かった。本当に坂というか階段が多くて何度もふらつきかけた。写真ではあまり人がいないところを写しているけど、実際は人だらけ。ハイヒールを履いていたお姉さんが、段差で転んでいた。
「やっと着いたー! でも、一番上かぁ……また階段……」
「地主神社って、お寺の中にあるんだね」
まだ牧原君のことを忘れる決心なんてついていないけど。
せっかくここまで来たんだから、縁結びの神様にお願いせずには帰れなくて。
またいつか、牧原君と会えますように。
奈緒と弘樹がいつまでも続きますように。
私も、2人の邪魔をしないで見守れますように。
素敵な男の子と出会えますように……。
神社と言えば、おみくじで。
隣に置かれていた木箱に百円を入れて、おみくじを一つ取り出すと……半吉って。奈緒も半吉って。隣にいた知らない女の子たちも、みんな半吉って。
「奈緒の半分と、俺は中吉にしといて、足して大吉」
「──さてと、お腹すいたし、デザート食べに行こうかな!」
「ははは、夕菜、さっきご飯食べたばっかだよ」
「えーそう? 階段だらけで疲れちゃった」
それは、半分嘘だけどね。