卒業証書は渡せない
第8章
51.最近の行動
2学期になってしばらくして、文化祭では去年と同じ装飾をすることになった。
3年生の他のクラスでは歌とか劇もあったけど、練習する時間を勉強に充てたい人もいたと思う。
もちろん、私も、そうなったと思う。
装飾が楽ですぐ終わるわけじゃないけど。
放課後、残って作業することもあったけど。
それ以上に私はいま、楽しいことはあまり考えたくなかった。
奈緒のことが忘れられなくて。
弘樹のことも、気になって。
「見てる分には、お似合いなんだけどねぇ……」
という琴未は、いつも私と弘樹を観察してるらしい。
「こないだの登校日だって、デートかと思ったよ」
屯してる人たちから逃げるために、弘樹はわざと私を引っ張った。同時に、自分が逃げるためでもあった。
でも弘樹は、それだけじゃない、って言ってた。
「やっぱりさ、あいつは……2人になりたかったんじゃない?」
「うーん……でも、前に私と付き合うつもりはないって言ったんだよ。こないだも、そんなこと言ってたし」
その言葉が本心かは全く分からないけど。
言われた事実が悲しくて、泣いたこともあった。
もちろん、今はまだ、弘樹は奈緒のもので、奪うなんて私には出来ない。
「ねぇ、夕菜、知ってる? 最近の木良の行動」
「……弘樹の行動? なに?」
「奈緒が亡くなってすぐの頃は、ずっと塞ぎこんでたけど……元気になりだしてから、夕菜を見てることが増えた」
「え……本当に?」
「うん。夕菜は気付いてないかもしれないけど、近くにいることが多いよ」
それは、牧原君が頼んだから?
それとも、弘樹がそうしたいから?
「木良もきっと、迷ってるんだよ。奈緒のこと、まだ忘れられないみたいだし。今は無理かもしれないけど、いつか、弘樹が言いに来ると思うよ」
そんな日は、本当に来るのかな。
今は──想像するだけで、奈緒に申し訳ないよ。
文化祭が無事に終わって、体育祭がやってきた。
去年と同じように、弘樹は部活対抗リレーでアンカーを走っていた。
結果は、一位が陸上部で、バレー部は二位。
「惜しかったね。もう少しだったのに」
「ああ……でも、陸上部がいなかったら一位だからな」
「専門だもんね。でも、弘樹、前にバレーと陸上と悩んだ、って言ってなかったっけ? 走るの好きじゃないの?」
「……前はそうだったけどな。だんだん遅くなってるし、去年は陸上が弱かったから。並べただけでも、良かったよ」
この体育祭を最後に、弘樹はクラブを引退する。
今年は1年生が多く入ったらしくて、安心して引き継げる、って喜んでた。
体育祭の片づけが長引いてる弘樹を待って、一緒に帰った。
もちろん、私と弘樹の関係は何も変わっていないし、変えるような話をするつもりはない。
ただひとつだけ、提案したいことがあって。
「これから時間ある?」
「……出来れば帰って寝たいんだけど」
「寄って行こうよ、奈緒のところ。月命日じゃないけど、体育祭終わったよ、って」
「──そうだな」
弘樹が奈緒に何を話したのかは聞いてない。
私は、文化祭のことは前に話したから、体育祭の報告と、これから受験勉強頑張るね、と伝えた。弘樹も同じだとは思うけど……何か違うこと、あったのかな。
私との関係──なの、かな。
それは私も話したけど、答えは、ないよ……。
3年生の他のクラスでは歌とか劇もあったけど、練習する時間を勉強に充てたい人もいたと思う。
もちろん、私も、そうなったと思う。
装飾が楽ですぐ終わるわけじゃないけど。
放課後、残って作業することもあったけど。
それ以上に私はいま、楽しいことはあまり考えたくなかった。
奈緒のことが忘れられなくて。
弘樹のことも、気になって。
「見てる分には、お似合いなんだけどねぇ……」
という琴未は、いつも私と弘樹を観察してるらしい。
「こないだの登校日だって、デートかと思ったよ」
屯してる人たちから逃げるために、弘樹はわざと私を引っ張った。同時に、自分が逃げるためでもあった。
でも弘樹は、それだけじゃない、って言ってた。
「やっぱりさ、あいつは……2人になりたかったんじゃない?」
「うーん……でも、前に私と付き合うつもりはないって言ったんだよ。こないだも、そんなこと言ってたし」
その言葉が本心かは全く分からないけど。
言われた事実が悲しくて、泣いたこともあった。
もちろん、今はまだ、弘樹は奈緒のもので、奪うなんて私には出来ない。
「ねぇ、夕菜、知ってる? 最近の木良の行動」
「……弘樹の行動? なに?」
「奈緒が亡くなってすぐの頃は、ずっと塞ぎこんでたけど……元気になりだしてから、夕菜を見てることが増えた」
「え……本当に?」
「うん。夕菜は気付いてないかもしれないけど、近くにいることが多いよ」
それは、牧原君が頼んだから?
それとも、弘樹がそうしたいから?
「木良もきっと、迷ってるんだよ。奈緒のこと、まだ忘れられないみたいだし。今は無理かもしれないけど、いつか、弘樹が言いに来ると思うよ」
そんな日は、本当に来るのかな。
今は──想像するだけで、奈緒に申し訳ないよ。
文化祭が無事に終わって、体育祭がやってきた。
去年と同じように、弘樹は部活対抗リレーでアンカーを走っていた。
結果は、一位が陸上部で、バレー部は二位。
「惜しかったね。もう少しだったのに」
「ああ……でも、陸上部がいなかったら一位だからな」
「専門だもんね。でも、弘樹、前にバレーと陸上と悩んだ、って言ってなかったっけ? 走るの好きじゃないの?」
「……前はそうだったけどな。だんだん遅くなってるし、去年は陸上が弱かったから。並べただけでも、良かったよ」
この体育祭を最後に、弘樹はクラブを引退する。
今年は1年生が多く入ったらしくて、安心して引き継げる、って喜んでた。
体育祭の片づけが長引いてる弘樹を待って、一緒に帰った。
もちろん、私と弘樹の関係は何も変わっていないし、変えるような話をするつもりはない。
ただひとつだけ、提案したいことがあって。
「これから時間ある?」
「……出来れば帰って寝たいんだけど」
「寄って行こうよ、奈緒のところ。月命日じゃないけど、体育祭終わったよ、って」
「──そうだな」
弘樹が奈緒に何を話したのかは聞いてない。
私は、文化祭のことは前に話したから、体育祭の報告と、これから受験勉強頑張るね、と伝えた。弘樹も同じだとは思うけど……何か違うこと、あったのかな。
私との関係──なの、かな。
それは私も話したけど、答えは、ないよ……。