卒業証書は渡せない
54.お正月
冬休みの間は勉強三昧だったけど。
『あけおめ! ことよろ!』
っていうメールが、年が変わった瞬間にいっぱい届いて、いくつかの返信はすぐにできたけど、返事を打ちながら寝てしまったのは、起きてから送信して……。
弘樹からも、もれなく届いた。他の友達と同じような内容で、特に変わったことはなくて。
受験生だって、元日くらいのんびり過ごしたい。
だから、いつもより遅めに起きて、お雑煮とおせち料理を食べて、テレビを見ながら、カードゲームをしながら、バイクが走っていく音を聞いて年賀状を取りに郵便受けに走りながら。
「あれ? これエアメール?」
届いた年賀状を振り分けていたお母さんが手を止めた。
「夕菜に? シンジ……マキ──」
「あっ、牧原君?」
確かに差出人は、Shinji Makiharaと書かれていて。
住所は、よくわからないけど、New Yorkになっていて。
わざわざ送ってくれるなんて、嬉しすぎるよ。
だから、さっそく「届いたよ! ありがとう!」っていう内容のメールをして。
ものすごく気分が良かったから、勉強モードに突入した私。
ときどきメールが届くからその度に集中力が切れかけたけど、悲しい内容のは1つもなかったから気分は良いままで。
もちろん、本当は、勉強なんかしたくない。
みんなと一緒にテレビを見て、笑って、楽しみたい。
でも、今日は、昼から行きたいところがあったから、朝は勉強を頑張った。
お昼ごはんは……特にないから、おせちの残りをつまんでみたり、お菓子の袋を開けてみたり、適当に小腹を満たしてご馳走さま。
「夕菜、そろそろ行くけど、大丈夫?」
「うん。今行く」
お正月に家族そろって行くところ。
初詣以外にありません。
「夕菜は、もちろん大学合格祈願よね」
「うん! もちろん」
って元気に返事して、家の近くの神社だから、みんな徒歩で。
神社でのお参りの仕方は──。
「あれ、鳴らすのとお賽銭と、どっちが先だっけ?」
どうしようか一人であわあわしてたら、
「どっちでもいーだろ、たぶん。二礼二拍一礼くらい、知ってるよな。ついでに、願い事と一緒に住所と名前も忘れるなよ」
「──って、弘樹、いつの間に……」
うちの家族には挨拶をした後らしく、春美が「あの人が木良って言うんだ……」と呟いてた。
若干混乱してる私をよそに、弘樹はお賽銭を入れて、鈴を鳴らした。それから、二回、礼をして、二回、手を叩いて、何かをお願いしていた。
私も弘樹と同じように、お賽銭を入れて鈴を鳴らして、二礼二拍してから……お願いは、みんなの合格祈願。弘樹や牧原君との関係は、今はいい。一度に2つも、神様だって忙しいし。
それから、もう一度礼をして、振り返ったら弘樹が待っていた。
「遅くなったけど──今年もよろしくな。残り少ないけど」
「う、うん。よろしく……そっか、卒業だもんね」
「あっという間だったよな。3年なんて」
「そうだね。特に今年は、速かったな……」
奈緒がいなくなって、本当に、時が経つのが早く感じた。
それとも、いろんなことがありすぎて、バタバタしたのかな。
「じゃあな」
弘樹と別れて、家族のところに戻って。
お母さんが弘樹との関係を聞いてくるのは、軽く聞き流して。
卒業。
もうすぐ、高校を卒業する。
でも、それ以外に弘樹が卒業しようとしてるものがあるなんて、このときは思わなかったよ。
『あけおめ! ことよろ!』
っていうメールが、年が変わった瞬間にいっぱい届いて、いくつかの返信はすぐにできたけど、返事を打ちながら寝てしまったのは、起きてから送信して……。
弘樹からも、もれなく届いた。他の友達と同じような内容で、特に変わったことはなくて。
受験生だって、元日くらいのんびり過ごしたい。
だから、いつもより遅めに起きて、お雑煮とおせち料理を食べて、テレビを見ながら、カードゲームをしながら、バイクが走っていく音を聞いて年賀状を取りに郵便受けに走りながら。
「あれ? これエアメール?」
届いた年賀状を振り分けていたお母さんが手を止めた。
「夕菜に? シンジ……マキ──」
「あっ、牧原君?」
確かに差出人は、Shinji Makiharaと書かれていて。
住所は、よくわからないけど、New Yorkになっていて。
わざわざ送ってくれるなんて、嬉しすぎるよ。
だから、さっそく「届いたよ! ありがとう!」っていう内容のメールをして。
ものすごく気分が良かったから、勉強モードに突入した私。
ときどきメールが届くからその度に集中力が切れかけたけど、悲しい内容のは1つもなかったから気分は良いままで。
もちろん、本当は、勉強なんかしたくない。
みんなと一緒にテレビを見て、笑って、楽しみたい。
でも、今日は、昼から行きたいところがあったから、朝は勉強を頑張った。
お昼ごはんは……特にないから、おせちの残りをつまんでみたり、お菓子の袋を開けてみたり、適当に小腹を満たしてご馳走さま。
「夕菜、そろそろ行くけど、大丈夫?」
「うん。今行く」
お正月に家族そろって行くところ。
初詣以外にありません。
「夕菜は、もちろん大学合格祈願よね」
「うん! もちろん」
って元気に返事して、家の近くの神社だから、みんな徒歩で。
神社でのお参りの仕方は──。
「あれ、鳴らすのとお賽銭と、どっちが先だっけ?」
どうしようか一人であわあわしてたら、
「どっちでもいーだろ、たぶん。二礼二拍一礼くらい、知ってるよな。ついでに、願い事と一緒に住所と名前も忘れるなよ」
「──って、弘樹、いつの間に……」
うちの家族には挨拶をした後らしく、春美が「あの人が木良って言うんだ……」と呟いてた。
若干混乱してる私をよそに、弘樹はお賽銭を入れて、鈴を鳴らした。それから、二回、礼をして、二回、手を叩いて、何かをお願いしていた。
私も弘樹と同じように、お賽銭を入れて鈴を鳴らして、二礼二拍してから……お願いは、みんなの合格祈願。弘樹や牧原君との関係は、今はいい。一度に2つも、神様だって忙しいし。
それから、もう一度礼をして、振り返ったら弘樹が待っていた。
「遅くなったけど──今年もよろしくな。残り少ないけど」
「う、うん。よろしく……そっか、卒業だもんね」
「あっという間だったよな。3年なんて」
「そうだね。特に今年は、速かったな……」
奈緒がいなくなって、本当に、時が経つのが早く感じた。
それとも、いろんなことがありすぎて、バタバタしたのかな。
「じゃあな」
弘樹と別れて、家族のところに戻って。
お母さんが弘樹との関係を聞いてくるのは、軽く聞き流して。
卒業。
もうすぐ、高校を卒業する。
でも、それ以外に弘樹が卒業しようとしてるものがあるなんて、このときは思わなかったよ。