ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 ふたりで顔を見合わせて無言で紅茶を飲んだ。

 「……あの。マフラー、お母様から頂いたっておっしゃってましたよね?お返しした方がいいと思うんです」

 黎は頬杖をつきながら彼女を見る。

 「そうだな。次に会ったときに返してもらおうかな?」

 「次?」

 「そう。コンサートに行けたら、その時にでもね……」

 「え?」
 
 彼女は困惑の表情を浮かべた。
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