ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
そうしたら、悲しそうな顔をする。もう、どうしたらいいの。今回だけよって言うと嬉しそうに笑う。その笑顔を見ると、何でも許してしまいそうになる。
ただの友達なのに……ダメ、それ以上になってはダメ。
むかし、むかしのはなし。
まだ、高校生の頃、同じピアノコンクールの常連で同じ先生に習っていた男の子に告白された。
私は特別に思っていなかった。でも、彼が特別に思っているかも知れないと大分前から気付いていた。でも、冷たく出来ないし、困っていた。
付き合えないと断った。すると、彼が豹変した。断ったのに、抱きついてきたり、手を握ってきたり。
しまいには、彼の演奏もおかしくなっていった。先生はなんとなく気付いていたのだろう。ある日問い詰められた。泣き出した私を背中を撫でながら慰めてくれた。