ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 女性をエスコートして歩くのも慣れているんだろうと思う。それに女性に対して、君は特別とか言い慣れていそう。わかっているのに、その言葉を向けられると嬉しい。はあ、どうしよう。
 
 「百合。いいか?」

 控え室にいる私を訪ねてきたのはマネージャーの神楽さん。
 彼も優しい。気配りが出来る人でとても助かっている。

 「はい。どうぞ」

 椅子に座ると私にも前に座るよう指示する。
 ピアノの前を離れてソファ席に座る。

 「百合。堂本のプロジェクトでコンサートが決まった。お前ひとりだ」

 「え?」
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