ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「もしかして、何回か一緒に出かけてる?」

 はっとしたような顔をして、口をつぐむ。

 「……い、いえ。そんなに出かけてません。大丈夫です」

 小さい声で話す。何が大丈夫なものか。そんなに目を輝かせて話すこと自体、ちっとも大丈夫じゃないと神楽は焦った。

 「百合。もしかして、堂本のこと意識してる?」

 彼女ははじかれたように顔を上げた。そして、頬を赤らめた。

 「……っ!」

 神楽は目の前の百合を見て、ギリギリと歯を食いしばった。
 恐れていたことが起きた。すると、急に百合が言う。
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