ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
百合さえ良かったら、時々この部屋を使ってもらい、ピアノを弾いてもらおうと思っている。母が英国へ渡るとき、黎が自分の代わりにこの部屋を管理しておいてほしいと言われたのだ。ピアノは弾かないと悪くなる。
黎の母は黎の音楽好きは自分の影響だというのもわかっている。そして、たまに黎が父親から離れる場所を作ってあげたいと言ってくれた。
父が黎を後継者として大事に育てているのはわかるが、長男としての重圧を理解出来ていないといつも黎を心配してくれていた。この部屋で自分を解放しなさいと言ってくれた。
百合に母を重ねているわけではないが、この部屋を預けてもいいと思えるのだ。もちろん、彼女が使いたいときに来てくれて弾いて帰ってくれるだけでいいのだ。
自分と約束しなくても、使って欲しい。自由に使えるよう合鍵を渡すつもりだ。もちろん下心が全くないとは言わないが、普段のピアノを弾く百合を見てみたい。
もし、彼女が合鍵を受け取ってくれたら、関係も一歩前へ進めるだろう。彼女の気持ちが全くなければ受け取らないとわかっているからだ。
あさってを楽しみにしているのは黎のほうだった。