ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

特別な人

 
 今日は今日本で人気実力共にトップの女性ピアニストがラベルのコンチェルトを弾く。話題のコンサートチケットを取るために、親友のコネを使った。彼女には勉強になるだろう。

 コンサートの休憩時間、彼女とフロアで飲み物を注文して飲んでいたら、声をかけられた。

 「あら、黎。今日もこの人と一緒なの?」

 腕を取って、自分の顔をのぞき込んでくる。蓮見静香。蓮見商事の社長令嬢だ。蓮見商事は父の会社のグループ会社。父と蓮見商事の社長は昔からの知り合いだったので、子供同士も小さい頃から知り合いだ。静香は双子で弟がいる。ふたりは学年でいえば、黎より一年年上だ。

 「……静香。今日もって、お前」
 
 「この間、オペラにもふたりでいたでしょ?目立ってたわよ。しかもあの席だとグループ内のチケットよね。ウチもお母様が取っていて、私一緒に行ってたのよ。席近いから気付くかと思ったのに、彼女のことばかり見て、気付かなかったの?」
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