ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 嫌みたらしく言う。見られていたとは思わなかった。グループ内のチケットだからそういうこともあるだろう。今日のチケットは実は蓮見に頼んだのだ。弟のほうに。蓮見商事が協賛している。

 百合が驚いて固まっている。
 
 「ねえ、こちらどなたなの?黎が最近デートしてるのってあなたなのね?噂になってるのよ。自分から女性を誘うことのない黎が機嫌良く女性と出かけているらしいってね」

 「……っ!」

 黎は静香の腕を引っ張った。

 「……おい、余計なことを言うな」

 百合はふたりを交互に見ながら、一歩後ろへ下がった。
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