ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 「あら、逃げなくてもいいじゃない。ねえ、黎。紹介してよ」

 黎は、諦めて彼女を紹介した。

 「栗原百合さん。ピアニストだ。うちの会社で音楽方面の支援事業を始めたんだ。そこの所属アーティストだ」

 「私は蓮見静香。蓮見商事という会社の社長の娘よ。黎とは幼馴染なの」
 
 「初めまして」
 
 紹介された百合は小さな声で静香に挨拶をする。

 「ピアニストなの?ごめんなさい、知らなかったわ。失礼ながら、まだあまり有名じゃないわよね?私、コンサートも結構行くけど、お見かけしたことないわ」

 百合は青ざめた。黎は舌打ちして、静香をとがめた。
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