ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
 
 小さい声で上目遣いに聞いてくる。黎は手で顔を覆って、上を向いた。

 「はー。すごい威力。その下から見るの俺以外にするなよ」

 黎は彼女の腰のうしろに両手を組んで自分へ引き寄せた。

 「お兄さんだけど、恋人になったんだ。呼び捨てしていいよ」

 「……恋人なの?」

 黎は笑い出した。

 「恋人じゃなければ、なんだい?君にとって俺は特別な人で好きな人なんだろ。そういうのを恋人っていうんだよ」

 「……だって。私と黎さんとじゃ、釣り合わない。黎さんは大きな会社の御曹司なんでしょ?私は……」
< 136 / 327 >

この作品をシェア

pagetop