ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 囁くように耳元で吐息まじりに言われる。百合は彼に倒れ込んでしまった。

 「……私だって初めてよ」

 「え?」

 「あなたが初めて……キス」

 黎は百合を見てにっこり笑う。想像通りだった。この喜びは大声を出したいぐらいだったが、彼女を見て聞く。

 「どうだった?俺とのファーストキス」

 百合は黎をつねった。

 「いてっ」
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