ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
 
 「こう見えても、結構料理は得意です。母が亡くなってからは自炊してましたので……」

 黎は驚いて彼女を見た。
 
 「お母さん亡くなられてるのか……苦労しているんだな」
 
 百合はどうやって生きてきたかを知られたくなかった。堂本には特に。だが、いずれわかるかもしれないと思ったので、母のことだけ言ったのだ。
 
 「何が食べたいですか?材料があればなんでも作れそうだなとこの間お台所を見て思っていたの」
 
 黎の顔を見て首をかしげる。
 
 「君が作るものならなんでも。何が得意なの?」
 
 「……残り物で何でも作ります。だから、このメニューにはこの材料っていうのが私は苦手」
< 148 / 327 >

この作品をシェア

pagetop