ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
 
 「あ、でも黎さんがここを使いたいときは言って下さいね。私、帰りますから……」
 
 黎はむっとして百合を見た。
 
 「百合。どういう意味だ?」
 
 「え?お仕事とかでひとりになりたいときもあるでしょ?だって、そっちの部屋書斎だったし。黎さんの書斎でしょ?お仕事するんでしょ。うるさくないほうがいいじゃない」
 
 百合が目をくるくるさせて言う。全く分かってない。ここへ今日も何しに来てると思ってるんだ!
 この困った奴をどうしてやろうかと抱き寄せた。
 
 「どうしたの、黎さん?」
 
 顔をのぞき込んで言う。
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