ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
彼女の容姿も素晴らしいのでポスターやチラシを見て購入を考える人が出てくるだろうと言っていた。
正直複雑だった。今まではコンクールの受賞者ということで、音楽好きな自分のような人達やニュースでしか扱われていないのが、ようやく日本国内で大々的にプロモーションを行うことになる。
百合の周辺が騒がしくなるのは恋人としては望ましくなかった。
とにかく、自分のかごの中で可愛がりたいのだが、そうもいかない。黎は悩んだが、彼女のしたい仕事をさせた結果の状況なので、しょうがないと諦めるしかなかった。ただ、不安は拭えなかった。
CDを販売したら、彼女を自分のものにしようと企んでいたのに、急にそういった関係で彼女自身が忙しくなった。
ラジオに出たり、レコードショップへ出向いたり、チェーン店の大きなCDショップではピアノを数曲弾いてサイン会などもし始めた。
容姿と実力が世間に知れるにつれ、CDの売上は上がり、彼女への仕事依頼が増えてきた。