ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「そうなの。音楽好きな人で私のことを知っていたの。コンクールの受賞者だということを言い当てられた」
「へえ?それはすごいね。嬉しかっただろ?」
百合が自信をなくしているのを今日のリハーサルでも目にしていたので、急に元気になっている今の状況はそういった理由だったんだろうと勘のいい神楽はピンときた。
顔を赤くして照れる百合は可愛かった。
「……そうね。それで、あさってのコンサートに席を探して必ず行くからその時に返して欲しいと言われたの。終演後楽屋を訪ねると言ってたわ。チケットってまだあるの?」
「あさってかい?うーん。もしかするともうないかもしれないな」
「え?それはまずいわ。このマフラー、その人へのお母様からのプレゼントだったらしいの」