ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「ああ、わかってるよ。デリバリーにしよう。今日は少しいいところを頼んである。もうすぐ来るからね」
そう言うと、すぐにチャイムが鳴って、デリバリーが届いた。
イタリアンのデリバリー。こんなものがあるのかと百合は驚いた。見たことのある名前の店。びっくりして黎に尋ねると、こともなげに返事された。
「この店はうちがよく使っているんだ。母が好きでね。だから、特別に家に来てもらったりしているから、今日は百合の頑張りとCD売上のお礼にもと思ってね」
百合は複雑な気持ちになった。そうか、自分の売上は黎の会社にとってもありがたいことで、黎はそのプロジェクトの責任者。自分は黎にとって仕事上の重要商品でもあることを再認識した。彼の熱意もそのせいかと少し寂しくなる。
「……百合?」