ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「百合。これからは恋人としてきちんと付き合いたい……君が欲しい」
そう言うと、引き寄せて口づける。そして、彼女の顔をじっと見つめている。百合は黎が強引にせず、答えを待っているのだとわかった。
今までも付き合ってきたけど、恋人とはそういうことじゃないと百合だってもちろんわかっていた。今日は黎に求められるかもしれないと覚悟していたし、そうなってもいいと思ってここへ来た。
「ええ。黎さんの本当の恋人になりたい……会えなかったからよく分かったの。私、あなたが好き……」
「百合、おいで……」
黎は手を広げて彼女を迎えた。
離して彼女の顔を見て、抱き上げると寝室へ運んで行った。
薄暗い寝室はすでにカーテンを閉めてあった。
彼女はベッドへ横たわると小さく呟いた。