ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「じゃあ、黎さんも私のものなの?もう、他の女性と親しくしないでね。私、浮気する人は大嫌い」
百合が不安げに目を瞬かせながら言う。
「そんな心配はしないでいい。言っただろ?俺は好みがうるさくて今まで好きな女性がいなかったって。百合がやっと見つかったのに、浮気なんて絶対しないし、出来ないな。百合こそ、他の男に言い寄られてふらふらするなよ。そっちの方が心配だ」
百合はそう言われて初めて神楽のことを思い出した。告白されたのに、そのままになっている。そして。そうだ、あのとき確か神楽はこう言った。堂本には渡したくないって。
百合の顔色が変わったのを見て、黎は驚いた。まさか、他の男の話で顔色を変えるとは思わなかった。
「……百合!何か心当たりがあるのか?おい?」
「黎さん。誰にも言わないでね。実は……神楽さんに二ヶ月以上前一度告白されたの」