ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 黎は彼女をつかむ肩の力が強くなってしまった。

 「……痛い」

 「あ、すまない。それで、なんて答えたんだ?」

 「その時はそういう風に見られないとお断りした。そしたら、僕の気持ちを知っていて欲しい、もし気持ちが変わったら教えて欲しいと言われたの」

 「なら、俺と付き合ったことを言えばいいだろ。俺から話すよ」

 「そうじゃないの。その時、言われたの。黎さんに私を渡したくないって言ってた」

 黎は驚いて手を離した。やはり、最初からばれていたんだと思った。神楽のあの目。そうか、ずいぶん前から牽制していたんだなと再認識した。
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