ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
「……百合。神楽のことは俺に任せろ。男同士で話し合う必要がありそうだ」
百合が彼を見上げてハッキリ聞いた。
「ねえ、神楽さんはどうして黎さんのことをそういう風に言うの?ふたりは実は仲が良くなかったの?」
黎はじっと考えた。百合も黙って返事を待っている。
「いや、仲は悪くなかったと思う。俺がそう思っているだけだと寂しいけどな。少なくとも俺は神楽に対して敵対心のようなものはない」
「じゃあ、神楽さん本人が何か思うことがあるのかしら?」
百合は神楽が黎を褒めるところしか目にしていない。それなのに、どうしてそういうことを自分に言ったのか、わからなかった。