ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない
 
 神楽も黎と同じ経営学部だった。ただ、神楽は吹奏楽の経験者で音楽関係のプロダクションへの入社を希望していた。いずれ、独立したいという野望もあり、経営を学んでいたのだ。
 
 今は、希望通りクラシック関係のプロダクションへ入社して彼女のマネージャーをしている。

 百合は逸材だ。彼女を育てることを社長から厳命されている。
 
 それだけではない。神楽は彼女に惹かれていた。百合は美人だ。そして鷹揚で少し世間知らずなところもあり、ウブだ。
 そういう彼女を好きになってしまったが、仕事だから神楽は自分の気持ちに鍵をかけている。

 名刺を見たまま固まっている自分を不思議そうに百合が見つめている。

 確かに黎は、音楽が大好きだった。自分では演奏はしないが、クラシックが好きらしい。
 
 母親がクラシック好きで小さいときから家で曲が流されていたと昔言っていた。
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