ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 百合はベッドでは黎を呼び捨てで呼ぶ。その声を聞くと、かえってスイッチが入ることに彼女は気付いてない。
 「百合……ダメじゃないだろ、ほらまた……こんなにしておれをどうする気だ……」

 黎は白い身体を蹂躙していく。すっかり黎に身体を作り替えられてしまった百合は、ベッドでは理性が飛んで黎の前でしか見せない夜の姿を見せてくれる。黎も彼女なしでは眠れなくなりつつあった。
 ひとしきり愛し合った後、黎が言った。

 「百合。地方へ行けるときはなるべく行くよ。夜だけ。泊まるところきちんと連絡しておいて……」
 「無理しないで。お仕事きちんとしてね」

 「ああ、もちろん。きちんと仕事しないと周りがうるさいからね。最近家にいないし、百合のことを隠しているのもばれそうだ。そろそろ難しい時期にきてる。地方へ行くのは仕事だと言うから大丈夫だ。丁度いい」
 「だから、あんまりここに来てはダメって言ったでしょ。お願い……」

 黎は、神楽との話し合いの内容について百合に詳しく話していなかった。また、百合も神楽と話したことを何も彼に言っていなかった。お互い言えない理由があった。
 
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